The symposium about river engineering, 2022

越水による侵食破壊メカニズムを考慮した新しい裏法面保護工法の検討

著者

小野瀬 涼太1,田中 規夫2,五十嵐 善哉3,黄 旭4

1.埼玉大学大学院 理工学研究科,2.埼玉大学大学院 教授 理工学研究科,3.埼玉大学大学院 助教 理工学研究科,4.株式会社NIPPO

説明資料

コメント (10)
  1. 常住 直人 より:

    越流落水後の洗堀域が堤脚に達しない程度もシート材を下流側に十分伸ばせば更に堤体被害を遅らせる、もしくは防ぐことが可能ではないでしょうか? もしくは堤脚部でシート材を鉛直に深く根入れさせては如何でしょうか?

    1. 小野瀬 涼太 より:

      コメントありがとうございます。
      ご提案の工法を含め様々な工法が考えられますが、本研究では施工が容易で、施工の範囲が小さく済むような工法を検討すべく、まずは3ケースを実施しております。堤内地側は官民境界の位置にもよりますが利用が制限される場合もあるので、天端から法面での範囲での対策に絞っています。

  2. 椿 涼太 より:

    p.5の「落下流」や「着水位置」の意味が最初みたときわかりにくかったです.(1)や(2)は最初みたとき,堤防の勾配を緩く・厚みを持たせるということなのかなと思ったのですが,初期の堤防の形は同じで,裏のり側の侵食がかなり進んだ状態がp.5の上段である,ということがp.6と見比べて気づきました.
    以上はコメントで,以下に関連した質問をさせていただきます.
    研究内容そのものというよりは条件設定の考え方への質問となり恐縮ですが,裏法部の傾斜の部分がほぼ無くなって,天端舗装で耐えている崖状態での粘り強さの議論が中心かと思いますが,どれくらいまで侵食が進むと,堤防全体の破壊に至ることが多いのか,という情報はございますでしょうか.(ほんとうに危ないのはどのような状態なのか.p.2の左側の状態は,耐えられる状態といえるのか.)堤防は材料なども多様なので,統一的な基準というのは難しいようにも感じますが,情報などございましたら教えていただけましたらと思います.

    1. 小野瀬 涼太 より:

      コメントありがとうございます。
      鬼怒川の決壊時のビデオを見ると、堤防の決壊前に半分程度まで削られた映像があることから、天端がしっかり残っていれば、半分くらいまでは持ちこたえられるのではないかと想像しています。
      ただし、土質条件によって変わるので、事例を集める必要があると思います。
      全静水圧と堤防の重さをくらべてみても、ある事例では半分残っていれば10倍くらい堤防の重さがあるので、飛ばない可能性があると思います。
      ただし、これも解析により一般化していく必要があるかと思います。

      1. 椿 涼太 より:

        小野瀬様
        上記,補足説明あるがとうございます.
        堤防が10倍くらい重さがあるというのは,土の比重が2.6で空隙もあるし,越流している状態で浮力も生じそうで,大きめではないかと感じました.いずれにしろ,堤防の補強方法は重要な課題で,実際に展開できると良いと思いました.

  3. 井上 隆 より:

    東京理科大学大学院・博士後期課程2年,井上隆と申します.越流水の着水位置を堤体から遠ざけることが,洗掘量を抑制し,粘り強さの維持に繋がることがよく分かりました.ありがとうございました.以下,2点のご質問を示します.
    ・CaseCのグリッド材の開口径と砂粒子の粒径の関係より,開口径から砂が吸い出されることによって裏法肩付近に落下流が形成されたのではないかと考えました.そのような洗掘状況は実験中に見られましたか?
    ・今後,シート材とグリッド材を融合させたような,良いところ取りの工法への発展はございますでしょうか?

    1. 小野瀬 涼太 より:

      井上様
      ご質問ありがとうございます。
      ・本実験で水路上面から撮影した動画からは、法肩付近での砂の吸出しは確認されませんでした。これは、Case Cのグリッドの空隙率が51%と大きく、越流水の多くはグリッド材の下部(グリッド材と法面の間)へ流れたためだと考えられます。
      ・法面はグリッド材のみで、法肩付近はグリッド材+シート材などは、効果が高いと想定されます。ただし、グリッド材の性質(目開き径や剛性など)が侵食抑制効果に与える影響や、グリッド材と植生を組み合わせた効果について、優先的に検討を進めております。

      1. 井上 隆 より:

        ご回答いただき,ありがとうございます.
        法肩付近の吸出しは無いとのこと,承知いたしました.
        植生の生やし方など,気になる点はございますが,更なる発展を期待しております.

  4. 小野瀬 涼太 より:

    井上様
    ご質問ありがとうございます。
    ・本実験で水路上面から撮影した動画からは、法肩付近での砂の吸出しは確認されませんでした。これは、Case Cのグリッドの空隙率が51%と大きく、越流水の多くはグリッド材の下部(グリッド材と法面の間)へ流れたためだと考えられます。
    ・法面はグリッド材のみで、法肩付近はグリッド材+シート材などは、効果が高いと想定されます。ただし、グリッド材の性質(目開き径や剛性など)が侵食抑制効果に与える影響や、グリッド材と植生を組み合わせた効果について、優先的に検討を進めております。

  5. 福島 雅紀 より:

    今回の検討では、浸透の影響を考慮しておりませんが、令和元年東日本台風で越水した箇所の堤防脆弱性指標を算定すると、ほとんどの箇所で0.01を超える値となっており、浸透の影響が相当大きかったと認識しております。今回提案された工法は、裏法面がある程度侵食されても、越水に対して粘り強いとしていますが、浸透によって破壊される可能性が高いと感じますが如何でしょうか。椿先生も類似の質問をされており、鬼怒川の事例を出されていますが、鬼怒川は越水開始から2時間以内で決壊していたと思います。やはり裏法面が侵食される速度をさらに遅らせる必要があると感じましたが、そのような追加的な対策(工夫)を検討される予定はありますか。