The symposium about river engineering, 2022

中小河川における横断構造物下流の河岸侵食危険度の検討~令和3年7月洪水(沼田川水系仏通寺川)を対象として~

著者

冨山 遼1,内田 龍彦2,井上 卓也2,鳩野 美佐子3,小林 大祐1,永井 秀和1,松尾 大地4

1.広島大学大学院 先進理工系科学研究科,2.広島大学大学院 准教授 先進理工系科学研究科,3.広島大学大学院 助教 先進理工系科学研究科,4.広島大学 工学部第四類

説明資料

コメント (12)
  1. 椿 涼太 より:

    ご発表ありがとうございます.p.11の堰の有無による二次流強度の違いが面白く感じました.ところで,洪水時の堰の周辺の水面形や常射流の状態はどうなっておりましたでしょうか.もともと跳水を起こして,エネルギーを解消させることも狙っていると思いますが,跳水などは起きていましたでしょうか.

    1. 冨山 遼 より:

      椿先生
      コメントありがとうございます.洪水時の水面形に関しては,河岸侵食が進行している増水時の写真と数値計算結果から,跳水は発生していましたがら落差が相対的に小さい湾曲部での被害箇所②では洪水ピーク時には波状跳水が発生していたと考えています.
      なお堰直下では水叩き工が設置されておりましたが,護床工などエネルギーを解消させる施設はありませんでした.

  2. 常住 直人 より:

     この堰では、堰下流エプロンの直下に段差があり、堰築造当初と現場条件が明らかに変わっています。堰の下流河床(下流水位)が低下したために、護床での跳水、減勢が起きず、護床直下洗堀から護床流失となり、エプロン直下で落下流洗堀が起きたのだと思います。現場条件が当初のままであれば、湾曲部で背水が強くなるので、湾曲部側の護床上跳水が潜り気味になるだけで、問題は無かったと思います。実際、現場条件が変わってない頃はそれで安定していたのではないでしょうか。
     河床低下が進行した場合は、落下流化によるエプロン直下洗堀の増大がまず大きく(河川中上流域の条件でも容易に5mほど掘れます)、二次流での洗堀は副次的なものと思います。
     今後は、当初条件での検討、下流河床高(下流水位)の変動も考慮した検討も行っては如何でしょう。 

    1. 冨山 遼 より:

      常住様
      コメントありがとうございます.
      直線部で河岸侵食のあった被害箇所①は堰(水叩き工)直下で被害があったのに対して,湾曲部を持つ被害箇所②は堰との距離が約5mと離れており,湾曲部外岸にのみ被害が確認されました.また,平成30年7月豪雨においては本研究で示した箇所では被災を受けておりませんが,令和3年7月被災箇所からさらに30m以上下流の外岸側で護岸被害がありました.ご指摘いただいているように堰下流での河床低下は跳水形態をより危険な状態にし,堰直下で底面流速を加速させるために危険度が高くなります.しかし,この被災箇所では椿先生のご質問の回答のように波状跳水と考えております.湾曲部では波状跳水であっても,落差によって湾曲部に接近する流れの水平方向渦度が強化されるために,湾曲二次流が発達し,それによって外岸底面付近に運動量が輸送され,流れが加速することがわかりました.これは本研究に追って行われた水理実験でも明らかになったことです.すなわち,堰下流部では一般的に射流や潜り噴流が発生する状態は底面流速が大きくなるため危険とされていますが,湾曲部の場合では二次流が強化される結果,波状跳水においても外岸底面付近に主流が集中するため危険であることがわかりました.

  3. 髙鍬 裕也 より:

    中央大学の髙鍬と申します.ご発表有難う御座います.
     構造物周りの複雑な流れ場を準三次元解析と三次元解析用いて説明しようとする挑戦的な研究と思いました.今後,三次元解析の結果を準三次元解析にフィードバックしていくことが重要と思います.現状の準三次元解析で三次元解析の結果をどの程度説明出来るのでしょうか.
     次に,解析精度関する質問です.両解析の検討区間においては水位が計測されていません(図-2).両解析の各種抵抗係数は痕跡水位を説明するように設定したとの認識で間違いないでしょうか.

    1. 冨山 遼 より:

      高鍬様のご指摘の通り,構造物付近の複雑な流れ場における被災要因となる本質的な現象が何であるかを明らかにし,準三次元計算にフィードバックしていくことは,実務的な河川の被災危険度の推定法の開発という観点からも,非常に重要であると考えております.

      本研究における堰下流湾曲部の流れでは,3次元計算結果より波状跳水が発生していると考えられます.
      用いた準3次元計算手法は非静水圧を考慮しないSBVC法であるため,水面曲率による非静水圧が支配的な流れである波状跳水の水面形は再現できません.
      非静水圧を考慮した準3次元計算法(例えばGBVC法)による解析によって堰下流における波状跳水の水面形を概ね再現できることは,内田ら(2018)の研究より明らかになっております.
      一方,本研究の内容にもありますように,3次元計算より堰下流の湾曲部では強い二次流の発生が考えられます.
      この原因は,堰の存在により水平方向渦度の強化が考えられ,堰がない場合に比べ堰が存在する場合の二次流強度が増加することを,準3次元計算(SBVC)は説明できています.
      よって,本研究結果より準3次元計算が説明できることとして,堰が存在することによって,下流湾曲部の二次流強度が増加することが挙げられます.

      既往研究において,直線水路における堰下流の潜り噴流や波状跳水の準三次元解析の再現性は明らかですが,堰下流における湾曲部において,流速分布の3次元的な変形の解析精度については不明な点が多いです.
      これらの準三次元計算における評価については,堰下流の土砂輸送の評価において重要であり,今後の検証課題とさせて頂きます.現在水理実験を行っており,三次元解析,準三次元解析の精度を検証しているところです.
      (参考文献)
      内田龍彦:粗面上に発生する跳水を含む段落ち部下流の流れの水深積分モデルによる解析法,土木学会論文集A2,第74巻,pp.17-26,2018

      また,解析精度についてですが,本研究では,痕跡水位は計測しておらず,流量を沼田川流域全体でキャリブレーションしたRRIモデルを用いて決定し,粗度係数は河床材料粒径をKsとしたものを用いることにしております. 3次元計算結果が現地でも発生した流れを再現していると仮定し,準3次元計算結果と比較することで,準3次元計算法の洪水時の被災危険度推定法の妥当性を議論しました.

      1. 髙鍬 裕也 より:

         冨山様,準三次元解析法とその適用事例等に関する説明有難う御座います.
         まず「~堰がない場合に比べ堰が存在する場合の二次流強度が増加することを,準3次元計算(SBVC)は説明できています」とありますが,堰の存在により非静水圧の流れになることは明らかであり(例えば,原稿の図-7),非静水圧を考慮した準三次元解析法(GBVC法等)で解析を行うのが本筋ではないでしょうか.
         次に,椿先生への返信において,増水時に河岸侵食が進行している旨がありますが,二次流強度や非静水圧が洪水期間中にどのように変化したか関心があります.また,同返信における増水時の写真との比較より,三次元解析の妥当性を検討することは出来ないでしょうか.

        1. 冨山 遼 より:

          高鍬様,非静水圧を考慮した準三次元計算を行うことが本筋ではないか,ということですが,ご指摘の通り,堰直下の流れを再現するにはGBVC法を用いる方が適切であると考えています.
          本研究の準三次元解析では,乱れエネルギーによる河岸浸食危険度抽出や堰下流湾曲部の外岸沿いの河岸侵食メカニズムを3次元計算と比較し,検討するために用いています.本研究で明らかにした二次流強度の増加は,堰が存在することによる水平方向渦度の強化であり,これは非静水圧を考慮せずとも発生すると考えられます.今後は,堰直下の非静水圧成分の被災要因に対する影響も含め,検討を行って参りたいと考えております.

          二次流強度の時間変化についてですが,準3次元計算結果より,ピーク流量時に二次流強度もピーク値を示し,流量の増減と二次流強度の増減の変化の様子は概ね一致しておりました.
          非静水圧の影響については,非定常流量条件で行っておりませんが,洪水期間中には潜り噴流と波状跳水が発生するため,非静水圧成分が増加する範囲は堰直下において変化すると考えられます.特に,堰下流に湾曲部を有する条件では,波状跳水が発生していたと考えられ,波状形状と合わせて非静水圧成分が発生すると考えられます.

          本研究における3次元計算はRRIを用いた流出解析におけるピーク流量を上流端境界条件としております.一方,写真における現象は,RRI解析の結果におけるピーク時と比べ約2時間後を示しており,再現性の妥当性の確認は困難と考えております. ご指摘の通り,本解析には課題が多いですが,その中で堰下流湾曲部における被災メカニズムとして二次流強度の増加機構があることを明らかにしました.

  4. 髙鍬 裕也 より:

    冨山様
    ご丁寧な説明有難う御座いました.
    今後の研究も含め勉強させて頂きます.

  5. 竹村 吉晴 より:

    時間がなさそうなのでこちらで質問させてください.
    被災の形態としては,洗掘により護岸が滑って崩落したのか.あるいは跳水を伴う区間ですので,跳水位置の変化などにより河川水位の急激な水位変化により護岸内側から河道側に圧力が作用て護岸が崩落したのか.このあたり何か御存知の点があれば教えて頂ければと思います.

    1. 冨山 遼 より:

      竹村先生
      コメントありがとうございます.
      今回の被害箇所に存在する護岸は不透過であることから,洗堀により護岸が滑って崩落したと考えられます.しかし,護岸崩壊後はご質問にもあるように,河川水位の変化により,護岸内側から河道側に圧力が作用し,河岸侵食が進行したのではないかと考えています.

  6. 竹村 吉晴 より:

    きっかけは,洗掘であったということですね.
    ご回答頂きありがとうございます,今後の展開を期待しております.