画像解析と準三次元流況解析を活用した安倍川における令和4年台風第15号の流量推定 2025年6月16日 最終更新日時 : 2025年7月3日 小川 絵莉子 著者 酒井 大介/国土交通省静岡河川事務所流域治水課 荒川 貴都/国土交通省静岡河川事務所流域治水課 冨田 遼/国土交通省静岡河川事務所流域治水課 小林 雄介/いであ株式会社名古屋支店河川部 小川 絵莉子/いであ株式会社名古屋支店河川部 森 充弘/いであ株式会社名古屋支店河川部 説明資料 2025河川シンポジウム_流量推定_250620ダウンロード
湾曲かつ合流部の複雑な場での観測・解析にチャレンジされていると拝見しました.
一次元流速計測技術であるSTIV,横断面二次元計算であるDIEX法を適用されているわけですが,準三次元計算法との比較に際して,ご苦労は無かったでしょうか?準三次元計算のu,v,wから,STIVで設定している検査線方向成分の流速を抽出して比較されているのでしょうか?
DIEX法で課題となる粗度係数の設定をファクトベースで整理されている点はとても素晴らしく,これからの同手法適用のお手本になると感じました.
一方,最終的には貯留関数+準三次元計算を軸にロジックを展開されています.水位境界条件による算出法等もある中で,ご提案の方法をとった考え方等ございましたら,ご教示頂けますと幸いです.
柏田様
ご質問ありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ございません。
以下、回答いたします。
>>一次元流速計測技術であるSTIV,横断面二次元計算であるDIEX法を適用されているわけですが,準三次元計算法との比較に際して,ご苦労は無かったでしょうか?準三次元計算のu,v,wから,STIVで設定している検査線方向成分の流速を抽出して比較されているのでしょうか?
→今回の流量検証での苦労した点ついては、小規模な令和6年洪水での検証をもって、大規模洪水である令和4年洪水の検証の確からしさを説明するために、流量規模の異なる2つの洪水において適当な低水路粗度係数を設定するという点で工夫が必要でありました。実態に見合うと考えられる方法として洪水規模に応じかつメッシュごとに粗度係数を与えるという考えに至りました。
流速の比較については、今回は、検査線方向成分の流速の抽出は行っていません。R4.9洪水では、観測範囲であった右岸側は深堀れしており、STIVと準三次元ともに、流れは流下方向が支配的と判断しました。このため、成分抽出は行わずに合成流速で検証した次第ですが、ご指摘の通り、成分抽出作業を行なえば、多少の検証流量の違いは生ずると考えられます。
R6.6洪水についても同じく、STIVの検査線方向の流速と準三次元流況解析の合成流速を比較しています。洪水時に、STIV検査線に直交する方向の流速が卓越する場合には、両流速の差は大きいと考えられます。しかし、今回はそのような詳細な検証にまでは至っていません。
>>一方,最終的には貯留関数+準三次元計算を軸にロジックを展開されています.水位境界条件による算出法等もある中で,ご提案の方法をとった考え方等ございましたら,ご教示頂けますと幸いです.
今回の流量検証は、安倍川の基準観測所(手越)において既往最大の水位を観測されましたが、浮子による流量観測が欠測したことから、従来の計画の算定手法である貯留関数法による流量を推定し、その確度向上を試みたものになります。貯留関数による流量を候補流量として与えた理由は、安倍川の従来の治水計画における流量算定手法であり、ある程度、確からしい流量を与えられると考えられたためです。
水位境界条件による算出方法については、上下流端に水位をあたえることと理解しましたが、本モデルに与えることのできる境界条件が上流端に流量、下流端に水位であるため、水位-水位の条件とはしていません。
よろしくお願いいたします。
非常に難しい地点での流量推定に取り組まれており興味深く見させて頂きました.
以下,2点について教えてください.
1. 観測地点は合流部下流に位置しますが,準三次元解析は合流後を上流端として流量を与えています.合流による下流側への影響はそれほどない(安倍川本流が支配的)と考えてよろしいでしょうか.令和6年では左岸側で高速流が生じていることから藁科川の影響があるのではないかと思いました.その辺りについて検討されていれば教えて頂けますでしょうか.
2. STIV表面流速+DIEXで流量を算出していますが,これらから得られたものと準三次元解析の断面内流速分布を比較したりしていますでしょうか.そのような比較があれば,更正係数の妥当性検証等に使えると思いました.
吉村様
ご質問ありがとうございます。返信が遅れて申し訳ありません。
2件のご質問について、以下の通り回答いたします。
>>1. 観測地点は合流部下流に位置しますが,準三次元解析は合流後を上流端として流量を与えています.合流による下流側への影響はそれほどない(安倍川本流が支配的)と考えてよろしいでしょうか.令和6年では左岸側で高速流が生じていることから藁科川の影響があるのではないかと思いました.その辺りについて検討されていれば教えて頂けますでしょうか.
→今回は貯留関数法やDIEX法による手越地点通過流量を上流端に与えるため、藁科川合流点下流を計算区間の上流端としています。合流点付近における安倍川の川幅水深比は、川幅500 m程度,水深0.6 m程度の800程度であり、二次流発生の目安とされる100程度より大きいため,二次流の影響は無視でき、安倍川本流が支配的であると考えています。
>>2. STIV表面流速+DIEXで流量を算出していますが,これらから得られたものと準三次元解析の断面内流速分布を比較したりしていますでしょうか.そのような比較があれば,更正係数の妥当性検証等に使えると思いました.
→断面内の流速分布の比較は行っていませんが、令和4年洪水を対象とした準三次元流況解析で得られた各メッシュの表面流速(流速横断分布図の赤丸)と平均流速(流速横断分布図の青丸)の比から、更生係数に相当する数値(平均流速/表面流速)を算定しています。
令和4年洪水の更生係数相当値(平均流速/表面流速)は、低水路内で平均すると0.81、高水敷も含めた横断面全体で平均すると0.83であり、非接触型流速計の表面流速係数の標準値である0.85より小さい値となりました。今後、他の洪水でも検証を行い、安倍川で用いる更生係数の妥当性評価を行うことが望ましいと考えております。
以上です。よろしくお願いいたします。
小川様
詳しくご回答頂きありがとうございました.
今後の展開も楽しみにしています.