The symposium about river engineering, 2022

流域勾配が大きな小規模田んぼを活用した流出抑制機能向上方策に関する研究

著者

成 岱蔚1,湧川 勝己1,川島 幹雄1,若松 聡1,渡邉 昌夫2,奥山 泰河2,中村 大介3,髙山 淳平4,小髙 一宏5

1.株式会社東京建設コンサルタント,2.千葉県 長生農業事務所,3.千葉県 県土整備部 河川整備課一宮川流域浸水対策班,4.千葉県 一宮川改修事務所 復興第一課,5.茂原市 経済環境部 農政課

説明資料

コメント (7)
  1. 山崎 崇徳 より:

    建設技術研究所の山崎崇徳です。
    現地フィールドにおける田んぼダムの貯留効果を定量的に把握した研究であり大変参考になりました。
    3点ほど質問させてください。

    1.スライド5、6右上のグラフのそれぞれの田んぼの水位を見ると、水田①では貯留効果が見られますが、その他の田んぼの水位はほとんど変化していません。田んぼ貯留というよりは水路流末の湛水効果ということはないでしょうか?
    2.水路流末にせき板を設置しているようですが、仮に、想定以上の大雨となった場合、道路冠水などが発生しないような浸水対策は取られているでしょうか?
    3.今後、田んぼダムを広げていくためには、地元との調整が不可欠だと思いますが、効率的な地元への周知方法や協力体制構築の迅速化などについて、良い方法があればご教示ください。

    1. 湧川 勝己 より:

      共著者の湧川といいます.
      質問に対して,返答させていただきます.
      1.言われるように,田んぼによる貯留効果というよりは,水路能力を上回る流量の貯留効果が大です.
      なお,水田①は最も下流端の右岸側(田んぼの高さは左岸側の方が田面高は高い)ですので,明確に貯留していることが分かります.水位計は田面から少し上に設置していますので,幾分かの貯留がみられますが,観測水位としては明確に表れていません.
      2.堰板は対策検討の契機となった令和元年の降雨でも道路面を超えないように計算をして決定しています.地元にもそのように説明を行っています.
      3.現在,千葉県で流域市町村を含んだ協議会などを設置し,流域治水対策に関する検討が進んでいますので,その検討の中で浸透していくものと思います.
      なお,迅速な協力体制というのは大事でしょうが,時間がかかるのは致し方ないと思います.それよりも,継続性のある対策が重要であると思います.

      以上,簡単ですが,答えになっているでしょうか??

      1. 山崎 崇徳 より:

        ご回答ありがとうございます。
        1.について
        承知しました。
        2.について
        貯留高の決め方について大変参考になりました。
        3.について
        現在、私どもでも田んぼダムに取り組みつつある状況ですが、関係自治体、地元議員、地区会長、所有者への説明・了解をとるまでにかなりの時間を要しています。これを広く展開していくとなると河川管理者が疲弊してしまうのではと心配しています。地域特性にもよりますが、何かよい方策はないかと思いお聞きしました。ありがとうございました。

    2. 成 岱蔚 より:

      山崎 崇徳 様

      コメント・質問ありがとうございます。
      1、 現在検討されている田んぼダムでは、田んぼに降った雨を畦畔まで一時的に貯留することが一般的である。本研究が対象とする田んぼでは、排水路の勾配は約1/500と田んぼ数枚が道路によって区切ら、一農区の形になる特徴があるため、降雨時の貯留は一般的に言われる田んぼの貯留と異なります。
      スライド5、6に示したように、貯留段階の(A)と(B)は一般的な田んぼの貯留と同様であり、水田①④の水位上昇から確認できます。貯留段階(C)では、ご指摘とおり、中小規模の降雨ですと、排水路末端の湛水のようになります。規模が大きい場合、水が下流端から道路面に湛水し、一農区全体が調節池のようになります。

      2、道路冠水が発生しないように、堰板では、水面が道路面に近くと上部から排水する構造となっています。スライド5段階(C)下の写真から確認できます。

      3、一宮川流域全体の流域治水を推進するため、「一宮川流域治水協議会」を設置し、比較的に先進的に取り組んでいます。その活動は千葉県一宮川改修事務所のホームページから確認できます。https://www.pref.chiba.lg.jp/cs-chousei-s/index.html。また、田んぼダムについては「一宮川流域治水協議会 茂原市部会」を通し、関係自治会、農業団体、千葉県の河川、農業部門、茂原市関係部門の協議で、推進しています。また、「一宮川流域治水シンポジウム」、「一宮川流域通信」などで住民の皆様に情報発信をしています。なお、元々茂原市では田んぼに取り組んでいたこともあり、流域治水の体制でスムーズに取り組むことができている事情もありました。

      1. 山崎 崇徳 より:

        ご丁寧にありがとうございます。
        先ほど、湧川様あて返信させて頂きました。
        今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 内田 龍彦 より:

    ご発表ありがとうございます.たんぼダムは流域対策の中でも着目され,特に小流域で活用において期待が大きい対策と思います.一方で,緑のダム同様,計画規模の豪雨に対しての効果が限定的との指摘もあります.これは計画された外力以上に対して効果が低下するダムと同じ問題を有していると考えられますが,ダム同様に超過外力に対しても効果をなるべく持続できるような検討が重要と思います.この点について,アイデアや具体の技術課題などありましたら教えてください.

    1. 湧川 勝己 より:

      内田先生
      コメント・質問ありがとうございます.
      共著者の湧川と申します.
      先生の質問に対して,私なりの意見を書かせていただきます.
      「流域治水」とは,私なりの言い方をさせていただくと,「流域全体の被害を軽減することを目的とした4次元の治水対策」であると思っております.
      今までの治水対策は,国土交通省が管理する大河川を中心として議論がなされ来ました.しかし,大河川の堤防整備等が低いとはいえ一定の水準に達していますので,今後の水害対策は,今後の治水環境の変化,例えば,気候変動等の自然環境の変化や高齢化の進行,地域社会の崩壊等の社会的な変化等に柔軟に対応できるように,大河川に流入する支川流域までも含んで水害の原因や要因を減少させていく方策を関係者全員で継続的に実施していくことだと思っております.そのために,河川改修等の治水事業はもとより,降雨予測に基づく利水ダムの事前放流や洪水予測に基づく避難対策等の時間項も入れた対策を推し進めていく必要があります.
      言い換えれば,時点時点において計画に基づく施設整備と実降雨時のダムなどの既存施設の有効活用の最適化を図っていくことが重要なポイントだと思っております.従って,今までのように計画論ですべてが解決されるのではなく,水害被害軽減という目的・目標に基づいた計画論,設計論,維持管理・運用論の役割分担についても整理が重要ではないかと考えます.勿論,「想定外」ということにならないように,各段階ではあらゆる洪水を考え,被害最小化の方策をとっていく必要がありますし,地域の社会の活性化に資するという観点も重要です.
      超過洪水時への対応ということですが,そもそも,流域治水において超過洪水という概念が存在するかという疑問があります.超過洪水というのは,施設計画や設計においては概念が存在するのでしょうが,流域治水計画においては,あまり大きな意味を持たないように思います.
      流域治水の計画を検討する際には,地域社会における洪水の概念について合意する必要があるように感じます.L1,L2というのは河川管理者が施設管理の観点から設定している概念ですが,あえて言えば,流域治水を考えるにあたっては,L2を想定して対策を検討する必要があると思います.その検討を行うためには,どの程度の洪水でどのような被害やリスクが発生するのかを土地利用を踏まえて評価し,住民と共有することが基本となるように思います.そのような議論,リスクコミュニケーションの中で,どの程度までの洪水被害を防止するのかなどの意識の共有化を図っていくことが重要だと考えます.
      さて,田んぼダムについてですが,先に述べたような地域社会の変化を勘案すると,いつまで存続するかが大きな疑問となります.しかしながら,営農者,地域社会,大河川流域の氾濫原に居住する人々のそれぞれが継続的に利益を共有できるものにしていく必要がありますので,いくつかの工夫がいるように感じます.スマート田んぼもその一つの対策ではあるように考えます.
      小規模降雨では,降雨流出をなるべく多く貯留・調節し,なるべく早く排水する(湛水時間を短くする)という観点から言えば,新潟大学の吉川先生が提唱されている方法も有益な方法の一つであるように感じます.また,田んぼが存在する地区の特性(流域勾配や排水路系統,氾濫の特性等)を踏まえた田んぼ群としての対策検討も重要であると考えます.
      換言すれば,流域特性に応じた田んぼダムに構造と配置について今後は研究・検討する必要がると思いますし,田んぼダムの被害については,流域全体で経済的な補償対策なども考える姿勢が必要かと思います.
      文章で書くとなかなか難しくて,的外れのコメントになっているかもしれませんが,ご照覧いただき,コメントなどいただければ幸いです.