河道計画・河道設計における高次数値解析技術の開発・実装の好循環形成のための基盤整備 2025年6月16日 最終更新日時 : 2025年6月16日 田端 幸輔 著者 田端幸輔/国土交通省国土技術政策総合研究所河川研究室 松井大生/国土交通省国土技術政策総合研究所河川研究室 小橋力也/国土交通省国土技術政策総合研究所河川研究室 瀬﨑智之/国土交通省国土技術政策総合研究所河川研究室 説明資料 20250620_発表資料(田端)ダウンロード
貴重な研究成果について報告頂き、ありがとうございました。
高次数値解析の河道計画・河道設計への活用に向けて、着実に検討が進められていることに敬意を表します。P3については、検討主体が国総研と民なのでこのような書き方になっているものと推察いたしますが、学や現場側にも「現状では不十分と思われること」はあるように思います。そのあたりの意見を吸い出して、シンポジウムでも議論・意識共有をするのは、好循環の実現に向けて大切かと思いました(コメント)。
P.5でUSACEでは、よほどのことがない限りは河床変動計算に頼ることは少ないとありますがここの理解がよくできません。個人的には、河川改修等の検討においては、精度に多少目をつむっても河床変動計算は現象の理解や改修の効果を可視化する上で必要となるケースは多いと思っています。USACEでは、河床変動計算に頼ることは少ないというのは、河床変動計算を実施しないということなのか、あるいは河床変動計算は行うがその結果に頼り過ぎることなく参考にしているということなのか、どちらなのでしょう?後者であれば、それほど認識に違いはないように思いました。
この度は資料をお読みいただき、ご意見賜り感謝申し上げます。
以下、いただいたご意見に対し回答いたします。
p.3について:
確かに官、民については現状の問題点について言及しやすい(されやすい)と思っております。本検討も官、民の連携強化の必要性を第一に意識したものであり、現場技術の「平均点」の底上げを目指したものであることについてご理解いただければ幸いです。
一方で、より高い立場でものを見て、官や民を指導する立場におられる学の皆様に対し、あまり偉そうなことを言うのも憚られますが、ぜひ日頃の熱心なご研究を通じて、官、民が到底気づけない本質的な事について、分かりやすくご指摘、ご指導いただければと存じあげる次第です。
河川シンポの場ということで、また、他でもない竹村先生とのディスカッションということで、あえて学への要望を申し上げさせて頂きますと、
自分自信、官に移ってみてよく思うのが、「現場が一番ほしいのは将来予測」ということです。いわずもがなですが、現場は河川整備メニュー、整備規模について意思決定し、限られた予算内で事業を進める責務があります。
そのためには、整備後に河道がどう応答するかの予測情報について、判断するための材料が必要となります。
再現計算は、起こった現象に対して得られた観測データの力学的内挿であり、洪水土砂水理現象の理解と、それを踏まえた河川整備、管理方法の見直しや、新たな方策の模索に繋がる極めて重要な行為であると認識しておりますが、再現計算を踏まえ、将来予測をどう考えるべきか(例えば境界条件や初期条件 等)についても、一定の知見が提示される必要があるように感じます。
このような問題についても、学に積極的に研究いただき、ご指導いただきたいと願う次第です。
p.5について:
河床変動計算は、条件設定の不確実性が高いこと、労力をかけてもそれほど良好な再現精度が必ずしも得られるとは言えない ということで、USACEではあまり積極的に検討されていないように見受けられました。
(少なくとも意見交換させていただいた技術者はそのように答えていた。(土砂水理にかなり長けた技術者も中にはやはりいるよう。) 彼らの扱う問題すべてが国家プロジェクトであり、3年以内に結果を出さないといけないという時間的制約も大いにあると思料)
よって、流れの計算をベースとして、そこから推定できる情報(例えば速い流れの集中度合いや掃流力の大小関係から、洗掘/堆積傾向を把握する等)から予測、判断することが多い という印象です。
USACEは直轄河川の管理者であり技術者でもあります。技術者として整備の是非や必要規模について工学的、合理的判断をすることに力を注いでいるものと思われます。
ただ、彼らとして河床変動計算を諦めているのではなく、必要であれば直営で観測もしてデータ収集しているようです。
また、流れ計算に関しては、現地状況や対象(構造物など)を踏まえ、必要に応じて3Dも使っているようでした。
以上、適切な回答になっているか分かりませんが、ご確認いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
田端様
ご回答ありがとうございます。
学の側も再現計算によるモデル検証や現象解明に留まることなく、それらが将来予測にどのように結びつくのか、あるいはそのための課題など、について言及することが重要と理解しました。
官(国総研)の一番上に「現場の課題解決方法として、学が開発するモデルの使途を見出す。」とありますが、ここは学側にもかかるように思い、リクワイアメントの提示がその潤滑剤になるものと想像します。
再現計算と将来予測の関係が触れられてましたので、個人見解を述べさせていただければ、これらは別物という感覚はなく、再現計算で十分検証されたモデルであれば将来予測(中長期のものは難しいと思いますが)にも十分活用が期待されるものと考えています。特に洪水時の水位の縦横断分布などは、再現計算から観測水位等に基づき粗度係数などのパラメータを同定しておけば、異なる規模の洪水でも高い精度で予測できる感覚を持っています。一方、河床変動はもとより、洪水時の平面流況などの再現性については、実河川ではあまり検討されてきていないように思っています。
回答を考えながら、例えば、水衝部付近の流況再現性を検証するなどの目的を持った洪水時の観測の実施等も、投稿論文の延長線上において議論するべき大切な課題のように思った次第です。
USACEでは、河床変動計算を行わずに判断されることが多いのですね。
経験を積んだ技術者育成やノウハウの共有が上手く機能しているものと推察しました。
議論いただき、理解が深まりました。
今後の展開を楽しみにしております。