蛇行する低水路を有する複断面河道における洪水流の流下機構と河道内被災の分析と対策―令和2年7月球磨川洪水を例として―

著者

後藤岳久/中央大学研究開発機構

長谷部夏希/株式会社東京建設コンサルタント

向田清峻/国土交通省 八代河川国道事務所 流域治水課長

福岡捷二/中央大学研究開発機構

説明資料

蛇行する低水路を有する複断面河道における洪水流の流下機構と河道内被災の分析と対策―令和2年7月球磨川洪水を例として―” に対して5件のコメントがあります。

  1. 原田 大輔 より:

    後藤先生、土木研究所の原田です。いくつか質問をさせてください。

    ・石狩川の計算では、浮遊砂が主体になると思います。浮遊砂の浮上率の評価法、また鉛直方向(特に上向きフラックス)の浮遊砂輸送の解析法を教えていただけませんでしょうか。(文献等を教えていただいても構いません)
    ・逆転する二次流について、興味深く拝見しました。内岸側の高速流との関係について、「二次流の逆転が生じるから内岸側に高速流が生じる」のか、独立の現象として考えられているか、どちらでしょうか。
    ・このような逆転する二次流を含む複断面蛇行流れの解析結果を、河道計画の実務にどのように活用していくか、後藤先生のお考えを教えていただきたく思います。

    (たくさん質問してしまいましたが、お手すきの際にお答えいただければ幸いです。)

  2. 後藤 岳久 より:

    土木研究所 原田様

    中央大 後藤です.
    ご質問ありがとうございます.
    頂いたご質問に以下に回答致しますので,ご確認お願い致します.
    ・石狩川の計算では、浮遊砂が主体になると思います。浮遊砂の浮上率の評価法、また鉛直方向(特に上向きフラックス)の浮遊砂輸送の解析法を教えていただけませんでしょうか。(文献等を教えていただいても構いません)
    →浮遊砂の計算は,乱流流速による外力項を加えた粒子の運動方程式により粒子の運動を解析し,跳躍運動(掃流運動)から浮遊運動に遷移する粒子の個数割合を計算しています.
    具体的には,跳躍運動(掃流運動)時の粒子の最大跳躍高さよりも,1粒径以上高い位置まで浮上した場合を浮遊したと判定し,その粒子数を数えています.
    判定基準の高さの妥当性については議論はあるかと思いますが,当研究室で実施しているAPM法を用いた数値実験により,概ねそのくらいの高さにまで粒子が浮上すると,跳躍距離が大幅に長くなり,粒子の運動形態が変化することを確認しているので,その高さを採用しています.
    方程式等の詳細については,下記の共著論文に記載していますので,ご確認頂けると幸いです.
    https://sfuku.r.chuo-u.ac.jp/top/sfuku/paper/2022_suiko_hasebe.pdf

    ・逆転する二次流について、興味深く拝見しました。内岸側の高速流との関係について、「二次流の逆転が生じるから内岸側に高速流が生じる」のか、独立の現象として考えられているか、どちらでしょうか。
    →私は,複断面的蛇行流れにおける内岸側の高速流の発生と二次流の逆転はセットの現象であると考えております.
    その理由を説明するために,複断面的蛇行流れの二次流の逆転と高速流が内岸側で生じる機構を説明させて下さい.
    まず,複断面的蛇行流れでは,高水敷の比較的遅い流れが相当量,低水路の外岸付近に流入することが極めて重要になります.高水敷から低水路の外岸付近に流入した流れは,水面付近では流速が速い(運動量が大きい)ため,低水路の中央付近まで入り込み,そして,その付近で潜り込み,底面付近ではそれを補償するように,外岸向きの流れが発生します.このようにして逆回りの二次流が生じています.このような二次流の逆転は,低水路と高水敷との流れの混合の影響を大きくし,外岸側の流速を低減または流速増加を抑制するようになります.そして,その結果として,主流速の位置が内岸側に移動し,内岸側で高流速が生じるようになります.
    このように,二次流の逆転とそれに伴う混合現象,内岸側の高速流の発生は相互に影響を及ぼし合う現象となっています.

    ・このような逆転する二次流を含む複断面蛇行流れの解析結果を、河道計画の実務にどのように活用していくか、後藤先生のお考えを教えていただきたく思います。
    ①河川の蛇行区間では,低水路線形によっては,大規模洪水時に内岸側を高速流が走るため,球磨川の事例のように,内岸側に設置された構造物・橋脚・堤防の被災を生じさせる恐れがあります.このため,蛇行区間では,内岸側で高速流が走るような河道区間であるかどうかを調べ,そのような河道区間については,構造物・橋脚の配置,堤防等の保護方法について,今後検討していく必要があるものと考えています.
    ②通常,蛇行河川では,相対水深が小さく(流量が小さい)単断面的蛇行流れとなる時間の方が複断面的蛇行流れとなる時間よりも継続時間が長いことから,内岸側に土砂が堆積し,砂州が形成され,その上に樹木群が繁茂しています.しかし,大規模洪水時の水位高い時間帯では,複断面的蛇行流れとなり,内岸側の流速が高まることにより,内岸側の砂州河床・河岸で洗掘が生じ,内岸側に繁茂した樹木群の倒伏・流失等を引き起し,結果として,洪水中に河道の流下能力を増加させます.また,当研究室で実施した多摩川の研究から,大規模洪水によって砂州河床や河岸が洗掘を受けて形成された河道形状は,多くの箇所で,治水と環境の調和する船底形断面形となることが分かってきました(後藤勝洋ら,河川技術論文集,pp.329-334, 2023).
     これらのことから,大規模洪水時に内岸側で洗掘を受けることを予め想定し,これを考慮した河道形状を設計・管理を実施していくことは,今後の気候変化による流量増加に対応し,克つ治水と環境の調和した河道設計に繋がるものと考えております.

    長文で分かりづらい点があるかと思いますので,ご不明な点については,再度質問頂いても結構ですし,発表時にご質問頂いても大丈夫です.どうぞ宜しくお願い致します.

  3. 原田 大輔 より:

    後藤先生

    丁寧にご回答いただきありがとうございました。

    1点目について、お伺いしたかったのは、p.5の青と赤の鉛直方向矢印の土砂輸送、つまり、例えば3層目と4層目の鉛直方向土砂輸送についてです。
    つまり、鉛直方向の流れを計算していない中で、どのような力によって上方向(青矢印)の浮遊砂輸送が生じるかという点です。
    鉛直方向の乱流拡散だとすれば、上方向(青矢印)と下方向(赤矢印)のフラックスはほとんど等しいはずで、むしろ粒子沈降による鉛直下向きの輸送によって、すぐに沈降するのではないでしょうか。
    ちなみに、教えていただいた長谷川さんの論文には粒子沈降の項(水から河床ではなく4層目から3層目)がなく、詳細まではよく理解できておりません。
    言葉だけで伝わっているでしょうか・・

    2点目について、よく理解できました。ちなみに、こういった「逆転する二次流」に関する実験や観測データ等はありますか?すなわち、検証は可能でしょうか。

    3点目について、ご研究内容を拝見すると、単に内岸側の橋脚の補強にとどまらず、堤防の線形を見直したり、高水敷と低水路の設計(高水敷に水が乗らないようにするとか、高水敷を全部掘削する、Drが0.3を超えないように高水敷を盛る、掘削する、もしくは低水路を掘削するなど)といった、より空間スケールの大きい河道設計法に発展する可能性があるように思えます。
    そういった議論の進展には、流れと河床変動の「予測」が可能か、また本解析法の精度がどうか、といった点が問われると個人的には考えていますが、そのあたりはいかがでしょうか。

    また、長文になってしまい恐縮ですが、せっかくの機会ですので、質問させていただきました。

  4. 後藤 岳久 より:

    ご質問有難う御座います.詳細に見て頂き有難いです.
    1点目について、
    ご質問の意味分かりました.まず,準三次元解析ですので,各層で鉛直方向の流れは計算しております.準三次元解析では各層の水平方向流速が計算できますので,それを用いて各層で連続式を計算し,鉛直方向流速(レイノルズ平均の鉛直方向流速)を計算しています.先にお伝えした論文では,式(7)の粒子の運動方程式において,レイノルズ平均の鉛直方向流速に加え,鉛直方向流速の乱れ成分w'を乱れエネルギーから仮定して与え,粒子の瞬間速度を計算しています.水平方向も同様に計算しています.
     式(9)では,求めた粒子の瞬間速度と風上側の土砂濃度との積をとることにより,浮遊砂の各瞬間の輸送フラックスを計算し,乱れスケールの時間で平均化し,平均的な浮遊砂の輸送フラックスを評価しています.
     粒子の沈降速度は,式中に陽には出てきていませんが,式(7)において,レイノルズ平均と乱れ成分の鉛直方向流速が無い場合(静水中)では,粒子速度が沈降速度に収束するように数値計算上の工夫をしています.

    2点目について、
    下記の福岡先生と渡邊先生の論文において,実験と3次元計算で検証がなされています.
    福岡捷二,渡邊明英:複断面蛇行水路における流れ場の3次元解析,土木学会論文集, No.586/Ⅱ-42,39-50,1998.2.

    3点目について、
    全くご意見の通りと思います.今回お示しした内容を踏まえて,河道設計を実施するためには,従来から行われてきた平面二次元解析に基づく検討では十分ではなく,非静水圧準三次元解析または三次元解析が必要になると思いますし,移動床解析もそれに応じて精度を高めていく必要があると思います.
    本解析法の精度については,石狩川では従来の平衡流砂モデルに基づく河床変動解析法よりも実際の現象を説明していると考えておりますが,現在,他の砂河川に適用して再現性の検証とモデルの改良・精度向上について検討している状況です.

    1. 原田 大輔 より:

      ありがとうございました。また今後とも、いろいろと教えてください。

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