The symposium about river engineering, 2022

水害時における避難率の推定方法に関する基礎的研究

著者

戸村 翔1,Bob Maaskant2,千葉 学3,舛屋 繁和4,山田 朋人5

1.株式会社開発工営社,2.HKV Consultants,3.一般財団法人北海道河川財団 企画部,4.株式会社ドーコン,5.北海道大学大学院 工学研究院

説明資料

コメント (4)
  1. 呉 修一 より:

    貴重な研究成果をありがとうございます。水害時の避難率を推定し定量化することは今後の減災対策の検討に向けて、大変重要と思いました。さて、もし考察があれば教えてほしいのですが、今回の80事例程度で、避難率の高かった事例に関しては、リードタイム以外の要因はありましたでしょうか?何か見えたものがあればご教示ください。 富山県立大学 呉修一

  2. 磯部 良太 より:

    避難率の推定は、様々な施策の効果を把握する上で非常に重要なテーマだと思います。ただ、避難には複雑な要因が関係してくるため、一概に推定することは難しいのが実態であり、そこに果敢に挑戦した意欲的な研究だと感じています。一点ご質問は、避難勧告(又は現行の避難指示)が適切に(避難に要する時間が確保されて)発令されている前提に立てば、地域・河川ごとに異なるリードタイムの長短は避難率に影響しないのではないかと考えてしまいますが、事後的に整理したリードタイムが避難率に影響する考察があればお教えください。

  3. 戸村 翔 より:

    呉修一様、ご質問いただきありがとうございます。
    「高い」避難率というのは定義が難しかったため、本研究ではシンプルに全事例の避難率VS様々な要素という形で、相関関係を把握しました。その結果、最も強い相関関係(N=32,R=0.6)を示したのは、避難率VS災害・避難経験(過去に経験した住民の割合)でした。しかしながら、本研究では大規模な水害(H27関東東北豪雨やH29九州北部豪雨等)での聞き取り調査結果あるいはアンケート調査結果や我が国の氾濫危険水位の設定方法等を踏まえ、リードタイムに着目した経緯がありました。
    今年度の研究(論文の謝辞に記載した共同研究の次期プロジェクト)では、災害・避難経験や防災訓練の参加割合等の要素に着目したイベントツリー解析を実施する予定となっております。

  4. 戸村 翔 より:

    磯部良太様、ご質問いただきありがとうございます。
    ご指摘の通り、避難率の推定は既往研究で様々な観点からの調査・研究がなされております。しかしながら、リスク評価時には、1982-2004年の日本5水害+米国1水害を基に設定された避難率(0%、40%、80%)を用いることが多く、近年頻発する水害が考慮することや海外実績を用いることの脱却を目指し、本研究をスタートしました。
    ご指摘の通り、リードタイム長短による平均避難率だけを見ると差はわずか(発表資料P10)であり、これは「誤差」程度と認識できるかもしれません。一方で、最大値・最小値(発表資料P9)を見ると、傾向が見て取れます。(最大値付近は極端にプロットが少ないですが)
    「リードタイムと避難率は無関係」という結論もありますが、少なくとも避難率の最小値をボトムアップする効果はあるのではないかと考えています。呉先生へのご回答内容にも記載した通り、今年度リードタイム以外の様々な要素に着目してイベントツリー解析等を実施する予定となっておりますので、その結果とも相対的な比較していきたいと考えております。