国内外の河川流・氾濫流解析モデルのレビュー〜3次元モデルに着目して〜” に対して6件のコメントがあります。

  1. 竹村 吉晴 より:

    特に海外ではopenソースや優秀な商用ソフトが普及しており、日本よりも三次元解析の適用例が多いだろうなという感覚を持っておりましたが、経年的なモデル別の使用状況の変遷等が示されており大変勉強になりました。今後、この傾向は加速するものと考えられる一方、流れの解析との両輪である河床変動解析の方はどのような状況なのでしょうか?個人的には流れの解析精度を向上させたとしても移動床モデルの方がそれに追随していなければ、河川管理上の問題解決は難しい、あるいは三次元解析を行うメリットが低減するように考えているところですが、世界的の動向について今回のレビューの中で感じられたことがあればお聞かせ願えればと思い質問させて頂いた次第です。

    1. 柏田 仁 より:

      ご指摘の通り,DelftやFlow-3Dといった商用・オープンソースコードの活発な利用は,日本と比較した際の海外の大きな特徴です.日本では各大学の独自モデルで精力的な研究が行われている一方で,「普及」の観点では遅れを取っており,課題と言えると考えます.
      底面流速を精緻に求めることができ,河床に及ぼす力がより正確に評価出来る三次元計算は河床変動計算の精度向上に大きく寄与し,河川管理への貢献が期待されます.
      河床変動計算・移動床モデルについては,次のような傾向があったと理解しています.なお,今回のレビューの整理にあたって,移動床モデルの詳細については確認せず,浮遊砂・掃流砂のいずれを対象としているか程度の分類しか行えていないため,回答者の"印象"を多分に含むことをお許しください.
      ・分合流部や橋脚周りを対象とした3次元流況・河床変動解析事例は多数あるが,(球磨川の例のような)長区間を対象とした計算例はない.同様に,砂州の移動といったスケールの河床変動計算の例も稀である.
      ・我が国での適用事例を確認できていないSSIIM(Sediment Simulation In Intakes with Multiblock option)というモデルの活用が活発である.Delftに匹敵する適用例があった.
      ・回答者が確認した範囲では,平衡流砂量式による掃流砂,移流拡散による浮遊砂の計算が行われている程度である.(この点に関しては,確認不足の可能性が否定できないため,土砂水理学の専門家のコメントがあると大変有り難いです.)

  2. 内田 龍彦 より:

    洪水,氾濫流解析に関する国内外の実例の網羅的な調査を発表いただき,ありがとうございます.感覚的に考えていた問題を論文ベースで定量的に図示いただき,大変興味深く拝見しました.二つ質問があります.
    1)二次流などによる分散や流速分布の変形について考慮できるように二次元モデルを改良した例は海外でも見られますが,今回対象となっていないというのは実河川への適用事例がなかったからということでしょうか?もし実河川への適用がなかったことについてお考えがあれば教えてください.
    2)解析法の適用範囲について今回は区間長を調べておりますが対象とする河川の川幅や洪水ハイドログラフの期間などについて情報はありますでしょうか?特に非定常現象についての国内と海外での捉え方の違いがあるかについて調べられていれば教えてください.

  3. 二瓶 泰雄 より:

    内田先生,コメントありがとうございます.
    1)二次流モデルに関してはご指摘通り多数ありますが,多くは単断面湾曲部・蛇行部が対象と思います.一方,複断面蛇行流に代表されるように,より複雑な二次流を対象としますと三次元・準三次元解析が必須であると思い,今回は,一般的な二次流モデルの研究論文は対象外としました.
    2)ご指摘の部分は,網羅的に調査できていません.解析対象期間や計算対象領域の面積,格子数などの情報は整理して,別の形で報告したいと思います.

  4. 柏田 仁 より:

    p.11のグラフの色分け等に誤りがあったため,訂正させて頂きました.

  5. 竹村 吉晴 より:

    柏田先生、ご返信頂いていたにもかかわらず返信できず申し訳ございませんでした。また、二瓶先生・柏田先生、発表賞おめでとうございます。励みになります。
    SSIIMの存在は知らなかったですので勉強してみます。昨日の議論も含めて感じたことは、学としては各大学で個別開発されてきた流れ・流砂のモデル(格子サイズ・離散化方法等も含めて)の計算結果の比較や適用性を整理していくことが大切なのだと認識しました。ベンチマークの設定は、議論が必要になるのでしょうね、鉛直分級や流れ・流砂の相互作用が重要になるようなチャレンジングな事象を設定することで若い研究者のモチベーションアップにも繋がるでしょうし、実験だけでなく高精度な数値シミュレーションもベンチマークに活用することも視野にいれつつ、それらが実務に役立つことが意識出来るような枠組みや意識の共通化が重要なように感じました。
    貴重な発表と議論を頂きましてありがとうございました。

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