The symposium about river engineering, 2022

非静水圧準三次元解析(Q3D-FEBS)と個別要素法を組み合わせた山地河川の巨石の始動の評価法に関する研究

著者

大野 純暉1,山下 篤志2,竹村 吉晴3,福岡 捷二3

1.国土交通省 中国地方整備局 岡山河川事務所,2.国土交通省 中国地方整備局 太田川河川事務所,3.中央大学研究開発機構

説明資料

コメント (8)
  1. 井上 隆 より:

    東京理科大学大学院・博士後期課程2年,井上隆と申します.大変貴重な研究成果,ありがとうございました.興味深く論文を拝見させて頂きました.以下,3点ご質問がございます.
    ・2洪水で巨石の移動がないサイトⅠと移動が生じたサイトⅡでの地形的な特徴の違いはございますか?また,もし粒度分布等の違いがございましたら,ご教示ください.
    ・図-9内の「青丸:R1洪水で移動した巨石」の凡例は,R1洪水のみ影響を受け,R2では移動しなかった,という解釈で宜しいでしょうか?
    ・現在は,DEMにより接触力のみの粒子間力を考慮されているかと思いますが,対象とする粒子運動には衝突力の作用も大きくなると存じます.ここの評価を今後どのように評価する予定でしょうか?
    以上,よろしくお願いいたします.

    1. 大野 純暉 より:

      ご質問ありがとうございます。
      1つ目の質問に関して,
      ・地形的な特徴として,サイトⅠは,砂から巨石・巨岩までの幅広い粒度分布で構成される洲となっており,表層に巨岩・巨石が置かれているまたは埋まっている状態です.一方,サイトⅡでは複数のサイトⅡよりも少し小さい巨石群が噛みあわさって形成される礫列,礫段が見られる瀬となっています.粒度分布に関しては,直接計測できておりませんが,サイトⅠでは砂・礫が巨石まわりで見られたのに対し,サイトⅡでは瀬となっているため,砂・礫は少なく,巨石群が嚙み合わさっておかれており,河床は岩盤となっていました.

      *巨岩は山地河川の基岩を構成する大きな岩群,巨石は山地河川で転石状態にあるものを指しております.

      2つ目の質問に関して,
      ・図9の青色の〇はR1年洪水で移動した巨石(サイトⅡの範囲外へ移動してしまった為,R2洪水前後における位置は把握していない),水色の〇はR2年洪水で移動した巨石(R1年洪水では移動しなかった巨石)を示しています.〇の色が対応しておらず分かりにくくて恐縮ですが,図-4と図-9の凡例は対応しております.

      3つ目の質問に関して,
      ・ご指摘の通り,本研究では
      ①砂礫が衝突することによって巨石が移動し始めること
      ②巨石の下流側にある砂・礫が洗掘されて巨石が移動し始める機構

      を取りこめておりません.当方は,巨石の始動を考える上では②の方が重要ではないかと考えております.今後はまず①について,従来の砂礫の河床変動解析モデルの導入すること,②については,当研究室で実施されている数値移動床実験結果を用いて分析,評価し,本研究で示した実用的なQ3D-FEBS+DEMモデルの精度向上することを考えております.

      以上,分かりにくくて恐縮ですがご確認のほどよろしくお願いします.

      1. 井上 隆 より:

        ご丁寧にご回答いただき,ありがとうございます.
        ・1点目:サイトⅠの幅広い粒度分布による河床材料で構成されているため,巨石周りに存在した砂が巨石と上手く嚙み合わさることで洪水流に対する抵抗力が増加し,サイトⅡよりも相対的に動きにくい条件下であったと解釈いたしました.
        ・2点目:承知いたしました.
        ・3点目①:「河床変動モデルを用いて砂粒子同士の衝突を表現する」ということは,河床面とそこに衝突する砂粒子の離脱着を考慮する(Saltation解析)という解釈で宜しいでしょうか?もし,代表的な論文がございましたら,ご教示いただきたく存じます.
        ・3点目②:砂粒子はどのくらいの粒径までを対象とされる予定でしょうか?DEMでかなり計算負荷がかかると思うので,気になりました.
        ご返信が遅くなり,申し訳ございません.よろしくお願いいたします.

        1. 大野 純暉 より:

          井上様

          回答の1と2が逆になっておりましたので、3点目の質問に関して再回答させて頂きます。

          3つ目の質問に関して,
          ・ご指摘の通り,本研究では
          ①砂礫が巨石に衝突することによって巨石が移動し始めること
          ②巨石の下流側にある砂・礫が洗掘されて巨石が移動し始める機構

          を取りこめておりません.当方は,巨石の始動を考える上では②の方が重要ではないかと考えております.
          今後はまず2について,洪水流は準3次元解析法(オイラー型)、砂礫は従来の河床変動解析モデル(オイラー型)、巨石はDEM(ラグランジュ型)で解くことで、幅広い粒度分布から成る山地河川の洪水流、河床変動解析が実用的に可能となると考えております。本研究では従来の河床変動解析モデルの導入は行っておらず、課題です。

          上記の課題をクリアした後、巨石に衝突する砂礫の影響とその取り込み方については,当研究室で実施されている数値移動床実験結果を用いて分析,評価し,上記で示したモデルの精度向上することを考えております.

          また、従来の河床変動モデルの代表論文としては

          https://sfuku.r.chuo-u.ac.jp/top/sfuku/paper/2020_kasen_takemura.pdf

          https://sfuku.r.chuo-u.ac.jp/top/sfuku/paper/%E5%9C%9F%E6%9C%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AB%96%E6%96%87%E9%9B%86%EF%BC%88%E9%95%B7%E7%94%B0%EF%BC%89.pdf
          が挙げられます。

          1. 井上 隆 より:

            大野様,ご回答及び論文の送付,ありがとうございます.大変挑戦的な研究であると実感いたしました.今後の発展・成果報告を心よりお待ちしております.

  2. 小林 大祐 より:

    大野 様
    広島大学大学院博士課程後期3年の小林と申します.
    貴重なご発表をありがとうございます.
    以下の2点について,質問させていただきます.
    1. 流体力の算定において,底面圧力と剪断力を巨石周りで面積分するということですが,巨石が河床から部分的に露出した場合の表面積の定義(算定方法)について教えて頂きたいです.
    2. 巨石の移動限界などを考える際,底面剪断力の解析精度は,特に山地河川といった3次元性の強い流れ場では重要と考えています.底面剪断力には,3次元性の強い流れ場において底面付近に輸送される運動量による剪断力増加は考慮されているのでしょうか.
    以上について,ご回答のほど宜しくお願い致します.

  3. 竹村 吉晴 より:

    小林様
    1.流体力の算定において,底面圧力と剪断力を巨石周りで面積分するということですが,巨石が河床から部分的に露出した場合の表面積の定義(算定方法)について教えて頂きたいです.
    ご質問ありがとうございます.「巨石が河床から部分的に露出した場合の表面積」についてですが,まず50㎝間隔の計算格子で巨石の形状を捉えておりますので,局所の河床勾配と各計算格子の平面的な面積を用いることにより,x,y,z方向の投影面積および斜面の面積を求めることができます.底面圧力(非静水圧)と投影面積の積,せん断応力と斜面面積の積に計算格子毎の巨石の占有率を乗じることで求めています.
    2点目のご質問ですが,おっしゃるように川底の空隙が大きいですので,浸透流と河床上の流れとの間での相互作用等が底面流速,せん断応力に大きく影響するものと考えております.こちらも本質的な課題であると思いますが,具体的に流体力を求めるとせん断応力の大きさは圧力による抵抗に対して極めて小さいことが分かっています.ただ,川底付近の流速は土砂移動と密接に関係しますので機会を見て考えていきたいと思います.
    ご質問ありがとうございました.また回答が遅くなり大変申し訳ございませんでした.

    1. 小林 大祐 より:

      竹村 様

      ご回答誠にありがとうございます.また,当日のご質問となってしまい,失礼致しました.
      両方の質問について,ご発表の中でも言及頂き,よく理解することができました.

      今後の進展などございましたら,また学会などで質問させて頂きたいと思います.
      ありがとうございました.